青葉こどもクリニック(静岡県袋井市)では、お子さまの様々な疾患に対し
て最新の知識を取り入れながら、患者さん、ご両親、医療関係者の連携を保
ち、子供たちの健やかな発達を促すような医療を行いたいと思っております。

青葉こどもクリニック
〒437-0023 静岡県袋井市高尾1780
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アスペルガー症候群、高機能自閉症

  • 高機能(知能の低くない)の自閉症です。
  • 一般的に知られている自閉症のお子さんと比べると、知能も良好で、言語能力も十分あり、全く違う疾患のように思われます。
  • しかし自閉症の中核的症状である、対人関係の問題、こだわりがあること、言葉の使い方のあやまりがあることが見られます。

<アスペルガー症候群(高機能自閉症)の診断基準 DSM-IV>

■対人的相互作用の質的な障害

・目と目で見つめ合う、顔の表情、体の姿勢、身振りなど、対人的相互反応を調節する多彩な非言語性行動の使用の著明な障害

  • 発達の水準に相応した仲間関係を作ることの失敗
  • 楽しみ、興味、成し遂げたものを他人と共有すること(例えば、他の人達に興味あるものを見せる、持ってくる、指差す)を自発的にもとめることの欠如
  • 対人的または情緒的相互性の欠如

■行動、興味および活動の、限定され反復的で常同的な様式

  • その強度または対象において異常なほど、常同的で限定された型の1つまたはそれ以上の興味だけに熱中すること
  • 特定の、機能的でない習慣や儀式にかたくなにこだわるのが明らかである
  • 常同的で反復的な奇妙な運動(例えば,手や指をぱたぱたさせたりねじ曲げる、または複雑な全身の動き)
  • 物体の一部に持続的に熱中する
  • その障害は社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の臨床的に著しい障害をひきおこしている
  • 臨床的に著しい言語の遅れがない(2歳までに単語を使い、3歳までに意思伝達的な句を使う)
  • 認知の発達、年齢に相応した自己管理能力,(対人関係以外の)適応行動、および少年期における環境への好奇心などについて臨床的に明らかに遅れがない
  • 他の特定の広範性発達障害または精神分裂病の基準を満たさない

■アスペルガー症候群、高機能自閉症の頻度

  • 自閉症の頻度は10000人に5人
  • 男女比=3:1
  • アスペルガー症候群、高機能自閉症を含めた頻度は10000人に91人(イギリス自閉症協会の報告)
  • 極軽い症例も含めると100人に1人という報告もある

■自閉症の遺伝

双生児の研究

  • 一卵性双生児の一致率:60〜90%
  •  自閉症でないと判断された兄弟も自閉症的特性は持っていることが多い
  • 二卵性双生児の一致率:10%以下

自閉症の遺伝子は見つかっていない

現在調べられている染色体の場所、および遺伝子

  •  第7 番染色体長腕
  •  第15 番染色体(15q11-13 )
  • (GABA)A受容体βユニット
  •  第17 番染色体(17q12 )
  • セロトニントランスポーター遺伝子

■どんな機能が弱いのか

相手の心を推測する能力

・サリー、アン課題

「サリーが自分の好きなビー玉をかごに入れて外に遊びに行きました。

アンはサリーのビー玉をかごからだして、横の箱に隠しました。

サリーが外から帰ってきて、ビー玉で遊ぼうとしました。

さて、サリーはどこを探そうとするでしょうか。

ビー玉は箱の中にありますが、サリーの立場になって考えることができるかどうかが決め手です。アスペルガーや自閉症のこどもは、サリーがまずかごを探すことが理解しにくいようです。

入力の弱さ、困難さ

  • 知覚の雑音の除去ができない状態。
  • 感覚、知覚が極端に敏感又は鈍感である。
  • 聴覚、視覚、触覚、味覚、嗅覚等々、通常の感覚では推し量れないような困難さがある。

統合の弱さ  

  • 情報の入力や処理に余裕が欠ける状態であり、結びつけたり、並び替えたり、視点の変換をしたりといった事が難しい。
  • 全体より細部の方の処理が優先されてしまいがちになる。
  • 結果として、情報はいつまでも個別的で般化ができにくく慣れが生じない。

■具体的な行動特徴

  • 友人を好むように見える  
  • 重度の自閉症の子どもの場合には、人を避けたり孤立を好んだりしますが、高機能自閉症の子どもの場合には、一見友人を好むように見えます。対人関係を持ちたがる子どもが多く、初対面の人にいろんなことを質問したり、友達といっしょに遊ぼうとします。そういうところを見て「自閉症ではない」と言われてしまったりしますが、よく見るとこういう子どもにも社会性の障害があるのです。
  • 形式ばって・大人っぽく・しゃちこばって振る舞うことで苦手な社交の場を切り抜けようとする

高機能自閉症の人も大人になると社交の場に出る機会がでてきますが、そういう場面で自然に振る舞うことが非常にむずかしいのです。

まるで英会話のテキストにあるような紋切り型の会話で切り抜けようとします。しかし、ちょっとした日常の話題になるととたんにうまく行かなくなります。

学校では、授業の時間は問題なくても休み時間に会話に入っていけなかったりします。

冗談、比喩、ほのめかし、皮肉などで混乱する冗談がわからず、母親が言うことを聞かない弟に「おまえは川で拾ってきたんだよ」と言うと、本気にしてびっくりして、区役所に戸籍を調べに行った子どももいました。

一方、駄洒落が好きな子どもが結構います。自閉症の人はことばの意味よりも音韻に反応しやすいのです。 

比喩やほのめかしの理解もむずかしいことの一つです。

物をこぼしたときに「まあまあ、お仕事ふやしてくれてありがとう」などと言うと、お仕事を増やすとうれしいんだと思ってまたこぼしたりするのです。

他者の目で自分の行動を見ることが苦手相手の身になって考えることができない、思んばかることがむずかしい。


■指導方法

  • ・曖昧な指示をさけ、具体的な指示を与える事によって、混乱を避ける。
  • 予定の変更等はなるべく早い時点で知らせて理解させる。
  • 視覚的な指示を併用する。
  • 少人数のグループに参加し、対人関係の作り方を学ぶ。
  • 薬物療法(SSRIなど)。

■SSRI(デプロメールなど)

  • 強迫性障害(反復して頭に浮かぶ思考あるいは抑制が困難な反復行動)に対して有効例の報告があります。
  • 易刺激性(21%)、無気力(37%)、常同行動(27%)、不適切会話(21%)に改善したが、多動性は14%悪化した報告があります。
  •  自閉症児における発語が増えたという研究報告があります。